一番易しい問題が一番難しい問題
一番易しい問題が一番難しい問題になってしまった。
「ローマ字」では一番やさしい導入の問題のレベルが
実は「ひらがな」では一番むつかしいレベルということになる。
「ローマ字」のときでもビルの屋上からロープで下へ下へおりていった気がしたけど
今度はさらに下へおりないといけない。
あれが最低レベルだと思っていたのに!
忘れてはいけないことは
そんな子供でも複雑な物語を理解するし
多彩な感情を持っている。
3,4歳でも私と何もかわらない。
表現できる言葉の数と経験の違いだけのような気がする。
言えることは「全力で作る」ということだ。
なめちゃいけない。
「ひらがなでしょ、まあ、まあ、そんなにがんばらなくてもいいんじゃないですか」じゃない。
すべての力を出し切ることだ。
文字をあやつる大人にとってはバカバカしくてやさしくてあたり前でも
初めて学ぶ子にしてみたら
すごい壁で
真剣勝負かもしれない。
「え~、うちは自然におぼえましたよ」
自慢話をしているのではない。
自然に覚える子は自然に覚える。
何でもそうだ。
そんな半径10メートル以内の話をしているんじゃない。
出来ることと教えること
教えることと教材をつくること
それらのあいだには距離がある。
椅子の硬い座り心地
机の平らなこと
鉛筆の芯の匂い
白い紙の白さ
消しゴムの消しカス
先生の赤ペンの自由闊達な曲線
足をぶらぶらさせながら
ゆっくりとゆっくりと
鉛筆を動かしていく
紙にこすれる鉛筆の音
誰かが筆箱を床に落とす音が聞こえる
先生が黒板に何か字を書いている
きれいな字だ
美しい文字だとぼんやりと思う。